元気スイッチ

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院長日記

今年になり2ヶ月間に、ご自宅、施設、医師会病院で、13名の方を看取りました。
前回のブログから、若い方の死も続き、また、知人の死もあり・・・流石にこれだけ別れが多く、自分の不甲斐なさも感じるところが重なると凹みます。
知人の死は突然だったようです。
噂で聞くところの病気(死因)は、私の専門領域でもあったようで、それなら、私にちょっとでも相談してくれていたら、急死は避けれていたかもしれない・・・
私の方から、健診勧めたり、気遣ったり、おせっかいするべきだった・・・そう思うと悔しくて仕方ありません。
別な知人から、亡くなった彼は、
「利益、経済的成功という価値観ではなく、全人生をかけ、ひとりでヘトヘトになりながら、料理を高め・極め、皆さんに提供し、喜んで頂く・・・」
そんな姿、生き方だったと聞きました。
好きなことを全身全霊でやって逝く・・・
改めて考えました。
私たちの身体は、神様からの借り物なんだな・・・いつかはお返しするときが来る。それは突然かもしれない。
事を成したり、人生を楽しんだり、辛いときも悲しいときもあるけど、自分の人生を精一杯生き、そのときが来たらお返しする・・・
私もいずれそのときが来るけど、そのときまで精一杯生きたいと、生きなきゃと改めて思いました。
合掌

そして、昨日は私より10歳年下(47歳)の方の看取りがありました。
今年に入り、腹水でお腹は膨らみ、足も浮腫んだりしながらも、食べることが大好きな彼は、奥様と、奥様の力も借りながら、一緒に美味しい食べ歩きをされました。
自分が美味しいものを食べたい以上に、周りの人に美味しいものを食べさせてあげたいという思いも強かったのだと思います。
2月16日の自身の誕生日には、神戸から家族も招き、ふぐ懐石を食べに行かれました。
自宅の坂道を必死に上がり降りし、車椅子で、何度も大好きなうどんの「くうかい」にも行かれました。
亡くなる4日前も「くうかい」に行きました。私も入れ違いになりましたが、「くうかい」に行き、翌日の訪問診療では「くうかい」談義に花が咲きました。
容体が悪くなってからも、ときおり、「「くうかい」のうどんは?」と言っておられたそうです。
がんの末期で体調が悪くなっていくと、ご家族は当然心配し、シリアスになっていき、憔悴します。
でも、訪問時はお二人とも食べ物の話で盛り上がることが多く、大変な思いをして食べに行っているんだけど、一緒に美味しさを共有した笑顔いっぱいで、奥様は楽しそうでさえありました。
本人は本当にしんどかったと思うけど、奥様に悲壮な思いばかりをさせず、奥様を自然と笑顔にし、楽しい思い出をたくさん残してくれた彼は、本当に男らしいなあ、格好イイなあと思いました。
彼は薬をあまり使おうとしませんでした。自分の症状を見極め、必要な薬だけを、状況に応じて使い、自分でしっかり決めていました。
私たちは、がん患者さんで、痛みがあるなら、オピオイド(医療用麻薬)を使う事を勧めます。同時に便秘・嘔吐対策の薬の服用を勧めます。
他の薬もそうですが、患者さんの疾患、状況を勘案して、私たちからしたらできるだけ苦しくないようにと薬の利用を勧めることが多いです。
しかし、彼は押しつけられるのを嫌いました。
我々医療者は、目の前の人を「患者」として扱い、それゆえに、薬を、医療を提供しようとしているんだなと思いました。
相手にとっては、「決めつけ」「押しつけ」になるんだなと
彼は、「患者」としてではなく、「人(ひと)」として、最後まで生き抜いたなぁと思います。
本当に素晴らしく、格好イイ、生き様だったと思います。
たくさんのことを教えて頂きました。
僕がそちらへ行くときは、「くうかい」のうどんを手土産に持っていきますね。そのときまで・・・
合掌