元気スイッチ

3-12-1 daijin shunan-shi
yamaguchi 746-0018 japan
TEL.0834-64-1170

院長日記

2020.03.24

新型コロナウイルス感染症情報_14

先日、『K-1』が知事の自粛要請を受け入れず、興行実施し、批判されていました。『K-1』に関わる方々にとっては「生業」なので、一方的な非難は難しいなと思います。が、どうして何千人もの来場者に配るマスクがあるのでしょう?我々の医療現場には未だマスク・消毒液が入ってくる予定がありません。が、ドラッグストアにはマスクが少しずつ入ってきています(連日、長蛇の列だそうです)。また、各種イベント会場では、来場者に手指消毒を促す消毒液がしっかり準備できているように見えます。医療現場には届かず、市中にはある・・・我々もそろそろ限界が来ています。我々末端の医療現場に届かなければ、診療を拒否せざるを得ない医療機関も出てくると思います。この矛盾を国は何とか早く是正して欲しい。
さて、沖縄県立中部病院、高山義浩先生のFB記事より。我々は「致死率」という言葉だけに注目し、震え上がりがちですが、算出の背景が各国で異なることがよく理解できます。以下、本文です。
===========================
【以下の内容は、私個人の見解であり、所属する組織とは無関係です】
毎週月曜日に沖縄県で開催しているメディア向け勉強会。今日のスピーカーは当科の横山先生でしたが、彼が業務で遅れてしまったので、私にマイクが回ってきました。そこで、添付のグラフを示しつつの10分ほどの話をいたしました。
===
このグラフは、今日までに新型コロナウイルス感染症の確定患者を1000人以上を認めている国について、報告されている死亡数をもとに致命率を算出したものです。中国については、武漢市のある湖北省とそれ以外に分け、日本については、国内の確定患者1101人とクルーズ船の712人を分けています。
同じ感染症でありながら、各国で致命率に大きな差があることが分かります。ここを読み解くことで、このウイルスとの戦い方における様々なヒントが見えてきます。
まず、イタリア。3月21日から22日にかけて、感染者は5560人増の5万9138人、死者は651人増の5476人になりました。致命率は世界最高の9.3%となっています。
その理由は、重症患者が急増し、医療崩壊が起きてしまっていることにあります。北部の一部の地域では、人工呼吸器が不足しており、集中治療室の受け入れ能力も限界を超えているようです。このため助けられない患者が急増しているものと考えられます。さらに、医療従事者の感染が重なり、医療崩壊に拍車がかかっています。この現象は、やはり致命率が高いイランやスペインでも起きていると思われます。
なお、イタリアで感染爆発が起きているのは、北部のロンバルディア州です。イタリア全土が崩壊しているわけではありません。局地的な流行となるのも、このウイルスの特徴ですね。イタリアでは、3月10日から原則的に外出禁止となっていますから、そろそろ患者数が減るのではと期待できます。むしろ、減ってこなければ深刻です。
中国の湖北省もまた、こうした医療崩壊を経験していました。中国では、湖北省以外の致命率が0.9%と低いのにも関わらず、湖北省だけが4.3%と高くなっています。ただし、中国の場合は、検査対象が重症者に偏っている可能性があります。
ところで、日本における致命率 3.7%とは、湖北省に近い数字です。もちろん、医療崩壊しているわけではありません。軽症者を調べきれておらず、母集団が重症者に偏っているからだと思われます。
もともと日本の行政検査の対象は、流行地域への渡航歴や患者との濃厚接触歴がある者としていましたが、入院を要する肺炎がある者、医師が総合的に判断して疑う者へと範囲を広げてきました。いずれにせよ、風邪症状があれば何でも検査対象としてきたわけではないため、捕捉できていない軽症者がいるはずです。
高い致命率を示しているフランスやオランダも同じ理由です。PCR検査について、重症のかぜ症状がある患者のみとしています。フランスのヴェラン保健大臣は「軽症や無症状の陽性者を探すスクリーニング検査はしない」と言い切っています。当然、見かけ上の致命率は高くなります。
不思議なのはイギリスです。100カ所の一般診療所と8カ所の病院でインフルエンザ様症状があれば検査対象としています。各地でドライブスルー検査もやっています。それでいて、致命率が極端に高い理由が分かりません。医療崩壊はしていないはずなのですが・・・、たぶん理由があるはずです。
では、徹底して検査をしたときの致命率はどれくらいなのでしょう? これこそが真の致命率に近い数字となるはずです。
実は、そのオペレーションをやりとげた事例があります。それは、ダイヤモンド・プリンセス号の乗員と乗客の方々です。3,711人の方々に対して検査を実施したところ712人が陽性となり、現在までに8人の方が亡くなられています。すなわち、致命率1.1%となります。高齢者に偏っているデータなので、年齢調整をすれば少し低くなると思われますが、これが病原性をもっとも反映したデータではないかと思われます。
その目で見ると、韓国の致命率が1.2%と低いことも、いかに徹底して検査をやったかが察せられますね。ドライブスルー方式に代表される効率的な検査体制により、その実施数は33万件と日本の10倍以上となっています。そして、致命率は日本の3分の1です。日本よりも死亡者数を3分の1にしている・・・ のではなく、感染者を3倍見つけているのだと考えられます。
なお、アメリカ、カナダ、ブラジルの致命率が低いのは、大きな流行が始まったばかりだからです。感染してから受診するまでに1週間、さらに重症化して死亡するまでには2週間ぐらいかかります。ですから、これらの国々の感染拡大の勢いを見る限り、あと1~2週間で急速に致命率が上昇してくるものと思われます。
さて、ざっと各国の致命率の背景を分析してきました。ちょっと長くなったので、ここで話した内容を切ります。
明日(たぶん)は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を制御できている3つの国について紹介しながら、今後の戦略について考えてみます。