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院長日記

2020.04.01

高山義浩先生と金城隆展先生の対話_第2部

沖縄県立中部病院の高山義浩先生と臨床倫理学者金城隆展先生との対話の第二部です。では、以下本文です。
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倫理学者・金城隆展先生との対話の2回目です。前回、新型コロナウイルス感染症の流行により、病床は何とか確保できても、医療従事者が不足または疲弊するリスクが高いことをお話ししました。今回は、重症者に対する集中治療体制へと話が進みます。

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第2部 増大する重症者に人工呼吸器は足りるのか?

金城)大流行となっても、受け止めるだけの病床が日本にはあるんですね。でも、医療従事者が足りなくなるかもしれない。そのあたりのイメージは、あまり持ってなかったです。これらを適正に活用することができれば、乗り越えられるかもしれませんが、事前の準備が本当に重要だと思いました。

高山)ただ、この新型コロナへの備えにおいて、深刻なことは他にもあるんです。それは、集中治療病床と高度医療機器の需給バランスの問題です。

金城)重症者への治療体制ですか? 欧米では、人工呼吸器が足りなくなっているところもあるようですね。

高山)ええ、政府のシナリオに基づく沖縄県の推計では、人工呼吸器を要するなどICUに入室するレベルの重症者数は、ピーク時に73人となっています。それに対して、沖縄県には、ICU病床が138床しかありません。

金城)なるほど、先ほどのお話では、入院を要する患者数は急性期病床数の3分の1でした。でも、人工呼吸器を要する重症者数はICU病床数の2分の1になるのですね。当然、いまも他の病気の重症患者さんが入室されているでしょうから、そこに73人の重症者を新たに入れていくのは難しそうですね。人工呼吸器の台数は十分ありますか?

高山)日本呼吸療法医学会と日本臨床工学技士会が、今年の2月に全国調査をしています(リンクはコメント欄)。その結果を見ると、沖縄県には393台の人工呼吸器があって、うち使っていないのが180台となってました。ちなみに、当院には36台あって、いつも半数以上は使ってません。これは全国でも言えると思います。私は全国の数字をざっと計算したことがありますが、ピーク時に人工呼吸器が足りなくなる都道府県は1県だけでした。そこも近隣県と連係すれば大丈夫でしょう。むしろ、繰り返しますが、やっぱり大事なのは、ICUの病床数と医療従事者の確保なんですよ。

金城)一般病床での人工呼吸管理は難しいのですか?

高山)できんことはありません。ただ、ICUのようにナースステーションから全体が見渡せる構造じゃないので、一般病床で管理しようとしたら、さらに人手をとられます。そして、人工呼吸管理を理解している看護師はそんなにいないです。

金城)やっぱり医療従事者が足りない・・・ 厳しいですね。

高山)一方、ICUは大部屋がほとんどなので、感染管理が難しいという問題があります。気管挿管するとエアロゾルが発生して、空気感染のリスクが高まります。ですから、新型コロナの患者さんと他の患者さんを一緒にはできないのです。

金城)どうするんですか?

高山)ICUを新型コロナ専用とするしかありません。他の病院のICUと役割分担するんです。ちなみに、当院のICUは新型コロナ専用とする予定で準備してます。で、ピークが近づいてきたら、延期できる手術はすべて延期して、術後管理でICUを使わないようにします。これは、ICUを有するすべての病院が行うべきことですね。ピークは長くはありません。そこを見計らって、地域一斉にICUを節約すれば、たぶん何とかなる。

金城)なるほど・・・ しかし、空気感染のリスクがある中での重症者管理とは命がけですね。

高山)まあ、でも結核治療もそうですし・・・ 医療現場とはそんなもんです。ただ、医療の需給バランスが崩壊して、救える患者が救えなくなることは、災害直下を除いて現代日本の医療が経験することはまずありませんでした。でも、今回は厳しいかもしれません。とくに、現場が強く葛藤することになるかもしれないのが、高度医療機器であるECMOです。(つづく)

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【写真】当院のICUにミンティ(空気感染隔離ユニット:1キットで約200万円)を設置したところ。なお、私は装備なしで設置確認してますが、実働させるときにはPPE必要です。これでICU内の4床について他の病床から分離できます。もともと陰圧管理の病床がICUに1床ありましたから、合計5人の新型コロナ重症管理ができるようになりました。さらに増加したときは、残りの病床9床をすべて新型コロナ対応とします。政府シナリオでは、中部医療圏におけるピーク時の重症者数は25人となっていますが、公衆衛生学的対応により、おそらく当院の14床だけでピークを乗り越えられると予測しています(もちろんバックアップは決めておくべき)。ちなみに、当院には人工呼吸器は36台ありますが、ECMOは2台のみです。後者は他院から借りてくることはできるかもしれませんが、最大の問題は・・・ やっぱり医療従事者の確保です。