元気スイッチ

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院長日記

2020.04.18

花戸貴司先生(永源寺診療所)のブログより

昨年2月、『チームあ・うんzero』の研修会でご講演頂いた東近江市永源寺診療所の花戸貴司先生のブログ記事をご紹介します。

昨年まで医療・介護の世界では「人生会議」(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)は大きなテーマでした。私も2月、市民講座としてお話をさせて頂きました。

が、今は新型コロナの全国的な感染拡大で、それどころではなくなっています。でも、花戸先生も書かれているように、新型コロナは高齢者で重症化・死亡率が高く、特に高齢者では「死」を強く意識させる恐い病気であることは事実。しかし、新型コロナから逃げることばかり考えて、そもそもの持病のこと、年齢のこと、忘れておられる方多い気がします。

新型コロナじゃなくても、今、入院すると簡単にはご家族には会えません。どこまでも「治す」を目指し、入院治療を望むのではなく、現状を受け入れ、家で様子がみれない状況でもなければ(苦しさや痛みでじっとしてられないような状態やお世話が大変な状態)、家でできることをしながら様子をみることもよいのではないかと思いますし、それをお手伝いする用意もこちらにはあります。

出かけようにも出かけられない今、改めて自分の人生を振り返ったり、これからの生き方や、「もしものとき」のことなど考えてみるのもいいと思います。

地元を離れているお子さんには「人生会議するから帰ってこい!」とは言いにくい今ですが、ビデオ電話で話をしたり、LINEで動画を送ったり、インターネットを利用して色んなことが可能です。そんなことにトライしてみるのもいいかもしれません。

以下、本文です。

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新型コロナに感染するまでに考えていただきたいこと

東近江市永源寺診療所 所長  花戸 貴司

 

厚生労働省から、「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(2020年4月14日掲載分)」が発表されました。

2枚目のスライドに、新型コロナウイルス感染症の国内発生動向という図が示されています。
これを見ると、70歳代でPCR検査が陽性となった人(671人)のうち約1割(71人)が重症(人工呼吸器をつける程度)肺炎になっておられます。その重症肺炎になられた人の約半数(37人)の方がお亡くなりになられています。
80歳以上についてはPCR検査陽性518人のうち、77人が重症肺炎となり、うち53人がお亡くなりになられています。
これからもわかるとおり、70歳以上で重症肺炎になった人のうち半数以上の方がお亡くなりになられる、とても厳しい感染症です。
我々医療者にとって病気になられた方の命救うことができず、大切な人を失うことはとても辛いことです。

しかし、その前に考えていただきたいことがあります。

もし、自分自身が重症肺炎になったら「肺炎の治療として人工呼吸器をつけて欲しいのかどうか」ということです。

そのような場面に直面した時には、本人は意思表示できるような状態にないことが多いのも現実です。このため決定を委ねられるのは家族あるいは親しい方となることが多く、決定を迫られた人の多くは迷います。我々医療者に尋ねられることもありますが、患者さんの治療方法を決めることはできません。
ですので、どのような治療を選択するのか、できれば元気なうちに自分自身で意思表示をしておいていただきたいのです。
当院では、そのような考えのもと患者さんに対しては情報提供とともに「人生の最終章をどのように過ごしたいか」といった対話を繰り返しています。患者さんによっては「そのようになった時には、自分は人工呼吸器はつけて欲しくない」と言われる方、あるいは「できるだけの治療をしてほしい」という方もおられます。
どのような選択であっても構いません。
自分自身で考えて、近しい人に伝えておいていただきたいのです。
我々も共に考え、伝えるお手伝いをします。

そして最後に、
新型コロナは全ての人に対して「死」を意識させる感染症ですが、感染した全ての人が肺炎になるわけではありません。
このウイルスに対する薬やワクチンがない現状では、我々にできることは、感染を予防し、栄養と睡眠を充分にとり体力をつけておくことです。
目の前に迫った現実から目をそらさず、生きていきましょう。