2020.05.05
高山義浩先生の記事より
このブログでは一般の方が参考になる記事があればと思って掲載しています。下記はいつもの沖縄県立中部病院の高山義浩先生のFaceBook記事ですが、今回の内容は一般の方、沖縄県以外の方にはあまり関係のない内容ですが、太字にした部分がとても心に刺さりましたので、それだけのためですが掲載します。
非常事態宣言が延期となり、先行きの見えない中、行き場のない不安や怒りを政府にもぶつけたくもなりますが、我々日本国民は、「自主的に家に入って内側からカギをかけ」(籠城じゃ!)、この難局を乗り越えて見せたいですね!
以下、高山義浩先生の記事です(あくまで沖縄県での対応です。他の県では独自の対策が検討されていると思います)。
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沖縄県では、4日連続で新規患者がゼロが続いています。幸いなことに流行は収束しつつあります。今後は、県外からの流行をどれだけ阻止できるかに対策の焦点が移行します。そして、県民の活動再開の判断が必要になります。
今日の専門家会議では、この再開判断についての検討がありました。もちろん、活動再開とは医学や公衆衛生学だけでなく、文化や経済、人権、倫理など幅広い側面からの検討が必要です。
添付のロードマップが確認されましたが、これはあくまで医療の専門家が集まる会議から県へと示された考え方にすぎません。ここから先は政治です。明日、県庁で開催される本部会議において、総合的な観点から知事が決断されるものと思います。
そのことを確認したうえで、専門家会議が示すロードマップについて解説します。
沖縄県では、ウイルスの持ち込み阻止をめざしますが、県民生活に及ぼす影響を最小化しつつ、感染拡大をコントロールするという戦略をとっています。いま、封じ込めている以上は、できるだけ長く維持することを目標としますが、絶対に入らない、流行しないというわけではなく、ふたたび流行しうることを想定しておく必要があります。
そのため、地域単位(医療圏・市町村)で流行規模を見計らいながら、社会的介入の強度を変更します。患者数が増加したら医療崩壊しないように制限をかけ、患者数が減少したら制限を緩めることを繰り返します。沖縄の場合は、域外からの入り口は事実上、那覇空港の1カ所なので、封じ込めに近いことも可能なので、新規患者数がゼロになるまで抑え込んでから再開がした方がよいと考えられます。
ともあれ、施策を頻繁に切り替えることになりますから、明確な基準による県民への説明が求められます。生活や経済へのインパクトは計り知れないので、ただ国の方針に追随したり、根拠もないまま不安に振り回されたりすることは許されません。
そこで、専門家会議では、現在の活動自粛と活動再開との間に、段階的な活動再開のフェーズを設けながら、目的と方針、そしてフェーズを移行させる基準を明確に示すことにしました。
◆ 活動自粛
まさに今、県民の協力のもとに実施されている「活動自粛」のフェーズです。感染拡大の抑制し、医療体制を維持することが目的となります。
救急医療への負担軽減のため、不要不急の受診を減らすよう県民に要請します。そして、ハイリスク者の感染予防のため、オンラインでの定期受診を実施します。また、発生地域から(へ)の不要不急の渡航自粛を呼びかけ、渡航後14日間の外出自粛を求めます。ただし、これは活動再開後も続けなければならない施策です。
さらに、不要不急の外出自粛と公共空間でのマスク着用を県民に求めます。なお、小学生以下のマスク着用については個別に判断することとし、一律には推奨しません。学校は、休校またはオンライン授業とします。
企業は、可能な限り在宅勤務を行ってください。小売店やレストランは、物理的距離を保つことを条件として営業していただきます。通販やテイクアウトを中心にしてただく必要があると思います。もちろん、生活必需品などの販売までもを制限するものではありません。その場合でも、多くの人が高頻度に接触する場所を定期的に消毒してください。
◆ 段階的な活動再開
新規患者数が10万人あたり1人/週未満、入院患者数が10万人あたり1人未満となり、かつ、感染経路不明の患者が少なくとも7日間確認されないときは、医療圏もしくは市町村ごとに「段階的な活動再開」のフェーズに入ったことを確認します。ここでは、封じ込め状態の確認しながら、低リスクの活動に限って再開することになります。
ハイリスク者への面会は引き続き自粛していただきますが、一般の方々の活動は再開していきます。ただし、公共空間では引き続きマスク着用を推奨します。休校は継続しますが、登校日を設定して少人数授業を行います。イベントについては、10人以上にならないように注意をしていただきます。
◆ 活動再開
感染経路不明の患者が少なくとも14日間にわたって確認されなければ、本格的に「活動再開」させていきます。このフェーズの目的は、封じ込め状態を維持しながら、社会機能を回復させることにあります。
医療は通常診療に戻ります。症状を有する方の外出自粛をしっかり守っていただき、皆さん咳エチケット、手指衛生を心がけていただきます。学校、企業、商業施設も感染対策を講じて再開できます。ただし、県外からの参加者も見込まれるような大規模イベントについては、引き続き延期していただきます。
ご注意いただきたいのは、活動が再開されるとはいえ、それは「新型コロナウイルスのある世界で暮らす」ということです。以前のような生活様式に戻すことはできません。新しい暮らし方を私たちは見出していく必要があります。
沖縄県における4月の流行の封じ込めは、いろんなものを犠牲にして達成したものです。これと同じようなやり方では、たぶん・・・ 第2波、第3波は乗り越えられません。持続可能性がないからです。皆さん疲れていきます。やがて、ほころびが出る。そして、大流行になるでしょう。
それを防ぐため、罰則を設けるということも検討されます。法的な強制力をもって、県民の行動を制限するというもの(もちろん条例レベルですが・・・)。実際、欧米の多くの国では、このやり方でロックダウンを行っていますし、日本のやり方を甘いと批判する人たちもいました。
でも、私自身は感染対策に罰則を設けることには反対です。これって、実は、生活様式を変える以上に大きな変化なんですよ。つまり、外からのリスクに直面した私たちが、自主的に家に入って内側からカギをかけるのか、あるいは、政府によって家に入れられて外側からカギをかけられるのか・・・ という違い。
欧米がどうあれ、私たちは前者でありたい。生活様式を変化させてでも、リスクに対して自己管理できる沖縄社会であってほしいと願っています。甘いと批判されたとしても・・・