元気スイッチ

3-12-1 daijin shunan-shi
yamaguchi 746-0018 japan
TEL.0834-64-1170

院長日記

2023.10.30

岡村海志先生(徳山中央病院研修医)より地域研修の感想を頂きました。

2023年10月28日
おのクリニックでの研修を終えて

徳山中央病院 研修医2年目 岡村海志

この度は、地域医療の研修を実施して頂きありがとうございました。
院長、副院長をはじめとしてスタッフの皆さんが優しく迎え入れてくださり、多くの経験を積むことができました。
研修では、クリニックで行われている普段の診療や往診に同伴させて頂き、地域にはどのような患者さんがいらっしゃるのか、どのような医療のニーズがあるのかを身をもって体験できました。普段、私が研修を行っている徳山中央病院は主に急性期の患者さんを対象とした病院のため、病気の治療の山を超えた患者さんは完治する前に地域のリハビリ病院などへ転院されます。そのため、患者さんの日常生活とその中にある通院を経験できたことは非常に貴重な機会となりました。
中でも一番貴重な経験となったのは往診先での看取りでした。この経験は自分の今後の医者人生を大きく変えるものであったと思います。
看取った患者さんは、高齢の女性で寝たきり、介護が必要な状態でした。娘さんが介護をしておられ、家で看取ることを前提に往診されていました。最初は往診に行くと笑顔を見せられていましたが、徐々に衰弱し、最終的にご飯が食べられなくなりました。その後昏睡となり、数日後に呼吸が止まり亡くなられました。死因は老衰です。ご飯が食べられなくなってからは2日に1回は往診し様子を見ていましたが、特別な医療は施さず経過を見守りました。ご家族も納得され一緒に見守られていましたが、急性期の病院であればご飯が食べられなくなったら点滴、胃瘻をし、場合によっては人工呼吸器をつなぎ、昏睡状態になっても何日も命を延ばすということをしていたかもしれません。
自分は、一度、大学を出て社会人となり7年間働いた後に山口大学医学部へ再入学して医者となりました。医学部で学ぶ前には、管に繋がれて病院に縛られて死んでいくのは普通ではないという感覚を当たり前に持っていたと思いますが、医学部で学ぶうちに忘れてしまっていたのかもしれません。子供の頃に「パッチ・アダムス」という映画のビデオが家にあり、何度も見ていましたが、その中で「死は医療の敗北か?」というシーンが出てきます。長らく忘れていましたが、看取りの中でそのシーンが頭に浮かんできました。
施せる医療がある中で、患者さんのためとは言え、あえてそれをしないという判断は、見方によっては「患者を死に向かわせる」という重い責任が問われる行為だと思います。しかし、その責任を負う覚悟を持つことが、本当の医者になるということなんだろうと感じました。
ご自宅で呼吸が止まった後、ご家族から連絡を受け往診に行き、死亡診断をさせて頂きました。その後、亡くなられた患者さんをご家族の皆さんと綺麗にしました。髪をシャンプーし、体を清拭し、患者さんが生前大事にされていた洋服を着せ、最後には娘さんがお化粧をされました。綺麗にしている間は、昔はこうだったという話があり、笑い話もあり、亡くなられた患者さんとご家族が最後の会話をされているような印象を受ける素敵な時間でした。病院でなくなった場合はこうはいかないだろうと思います。自宅で、家族で看取るという素晴らしさを実感し、自分の人生の最後もこうであったらありがたいなと思いました。
この実習で多くの貴重な経験を積むことができました。この経験を糧に、今後も研修に励み、患者さんに最適な医療を施せるよう努力していきたいと思います。ありがとうございました。